車に乗っていて、ブレーキを踏んだときに「キーキー」「ゴー」「ガリガリ」などの異音がすることはありませんか?
最初は「たまにしか鳴らないし、そのうち治るかも」と思ってしまいがちですが、その異音、実は重大なトラブルの前兆かもしれません。
ブレーキはクルマの中でもっとも重要な安全装置のひとつ。異音を放置すればするほど、事故のリスクや修理費用は大きくなっていきます。
この記事では、ブレーキの異音が発生する原因と、放置した場合にどんなリスクがあるのかを詳しく解説します。
ブレーキの異音にはどんな種類がある?音の違いでわかる原因とは
異音といっても、その種類やタイミングによって原因はさまざまです。以下では代表的な音と、それぞれに考えられる原因を紹介します。
【1】キーキー音(金属が擦れるような高音)
この音は、ブレーキを軽く踏んだときに鳴ることが多く、比較的よくあるタイプの異音です。
考えられる原因:
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ブレーキパッドの摩耗が進行している
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パッドの材質やダスト(粉じん)が影響している
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ローターに軽いサビや汚れがついている
新品のブレーキパッドでも、材質によっては「鳴き」が発生しやすいこともあります。
とはいえ、「鳴き止めグリス」で軽減できる場合もあるため、気になる場合は点検が無難です。
【2】ゴーッという低く響く音(うなり音)
この音がする場合は、パッドだけでなくローター(ディスク)の状態が関係していることが多いです。
考えられる原因:
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ローターの表面が歪んでいる、または摩耗している
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パッドとローターの「当たり」が悪くなっている
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高速走行から急ブレーキを繰り返した影響(熱による歪み)
うなり音が継続して聞こえる場合は、ブレーキがうまく作動していない可能性があります。放置すれば、ローター全体の交換が必要になることも。
【3】ガリガリ音(深刻な金属音)
最も危険な異音です。パッドが完全に摩耗し、金属の土台がローターに直接当たっている状態と考えられます。
考えられる原因:
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ブレーキパッドが完全に無くなっている
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キャリパーのピストンがむき出しになり、ローターと接触している
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ローターが大きく削れてしまっている
この状態で走り続けると、ブレーキがまったく利かなくなる恐れがあるため、ただちに走行を中止し、修理工場やJAFなどに連絡してください。
ブレーキ異音を放置すると何が起こる?
ブレーキの異音は、「何かおかしい」という車からの明確なサインです。
それを放置すると、次のようなトラブルに繋がっていきます。
【1】修理費が跳ね上がる
たとえばブレーキパッドの交換だけなら、1万円前後で済むことが多いです。
しかし、異音を放置してローターやキャリパーまで損傷すると…
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ブレーキローター交換:1枚あたり1万〜2万円以上
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キャリパー交換:片側3万円〜
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工賃:車種や店舗によって変動あり
最悪の場合、ブレーキ全体の「一式交換」が必要になることもあり、合計で10万円以上かかるケースも。
【2】ブレーキ性能の低下による事故リスク
パッドの片減りやローターの歪みによって、「片効き」と呼ばれる現象が起こることがあります。これは、左右どちらかのブレーキだけが強く効く状態で、ブレーキ時に車が横に引っ張られるような感覚が出ます。
こうなると、急ブレーキ時にスピンや衝突の危険が高まります。
また、パッドが無くなっている状態では、制動距離が大幅に伸びて、赤信号や渋滞で止まりきれないケースも。
【3】最悪、ブレーキが完全に効かなくなる
金属同士が削れあって発熱し、焼き付きが発生すると、ブレーキの内部が損傷し、完全にブレーキが効かなくなることがあります。
こうなると、下り坂や高速道路では命に関わる大事故にもつながりかねません。
自分でできる応急チェックポイント
異音が出たときに、自分で確認できる範囲のポイントもあります。
■ パッドの残量(ホイールの隙間から確認)
ブレーキパッドが残っていれば、1cmほどの厚みがあるはずです。数ミリしかなければ要交換です。
■ ダストや汚れの有無
ブレーキ周辺が黒く汚れていたり、ホイール内側に鉄粉のような汚れが溜まっていれば、パッドやローターの状態を疑うサインです。
■ 異音の出る条件を記録
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雨の日だけ鳴る?
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一度走れば音が消える?
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ブレーキを「踏み始め」「離す時」に鳴る?
点検時に伝えると、診断のヒントになります。
ただし、自分で分解したり無理な判断は禁物です。
異音が出たらどうすればいい?
異音が確認できたら、以下のような対応をとりましょう。
【1】整備工場やディーラーでの早期点検
ブレーキのトラブルは初期のうちに見つければ軽度の整備で済むことも多く、出費も抑えられます。
【2】ロードサービスに相談
深刻な金属音や明らかに異常な感触があるときは、そのまま走るのは危険です。
JAFや保険会社のロードサービスを活用しましょう。
【3】日常的な車の“耳”を育てる
異音は「慣れ」で気づきにくくなります。定期的に音や振動に意識を向けるクセをつけておくと、小さな変化に早く気づけます。
まとめ|「鳴ったら止まれ」が基本
ブレーキの異音は、ただの「音」ではなく、安全性能に直接関わる異常のサインです。
小さな音のうちに対処すれば、修理費もリスクも最小限に抑えられます。
「そのうち消えるかも」ではなく、「鳴ったら点検へ」。
車も人間と同じで、“ちょっとおかしいな”を見逃さないことが、安心につながります。